かつては歯科医師のアシスタントというイメージが強かった歯科衛生士。しかし最近は、独立や開業という新しい働き方を選ぶ人も増えています。
ホワイトニングサロンやデンタルエステの経営、フリーランスのセミナー講師やコンサルタントなど、独立開業した歯科衛生士は様々なジャンルで活躍しています。
それぞれの仕事の特徴、独立開業の方法や注意点などについて、詳しくご紹介しましょう!
d latte編集部 みさき
歯科衛生士歴12年。総合病院の歯科口腔外科で経験を積んだ後、現在は一般歯科クリニックで予防歯科を中心に従事。患者さんとのコミュニケーションを大切にし、分かりやすい口腔ケア指導に定評がある。2児の母として育児と仕事の両立に奮闘中。同じ境遇の歯科衛生士さんに寄り添う記事執筆を心がけている。
※本記事で紹介している商品にはPR商品を含みますがランキング・コンテンツ内容はd latte編集部調査をもとに作成しています。また本記事内の情報は一般的な知識であり、自己判断を促すものではありません。
歯科衛生士は独立開業できるの?

業務範囲を超えなければ、誰でもできる!
歯科衛生士は国家資格を有する職業で、歯科医師が行う治療以外の様々な業務を行います。この業務範囲を越えなければ、誰でも独立や開業が可能です。
ますは、歯科衛生士が行う三大業務について見てみましょう。
・歯科予防処置
虫歯や歯周病などを防ぐための処置。歯のクリーニング・歯石除去・フッ素塗布など。
・歯科診療補助
歯科医師が治療を行う際のサポート。患者さんの誘導・器具の準備や受け渡し・バキュームの操作など。
・歯科保健指導
口腔環境を整えるためのアドバイス。歯磨き指導・生活習慣の指導・嚥下機能訓練など。
歯科衛生士が担う三大業務は、主に上記のような内容です。しかしその中には、歯科医師の指導の下で行わなければならないという業務も少なくありません。大まかに言うと、医療器具や薬剤を用いた処置などが当てはまります。
そのため、歯科衛生士が独立開業する場合は、主に歯科医師が在籍していなくても行える業務を提供するという形になります。

独立への憧れは膨らみますが、歯科医師との連携が前提の業務も多く、実際にできることの範囲を冷静に見極める必要がありそうですね!
歯科衛生士が独立開業でできる働き方8選

歯科衛生士の資格があれば、独立開業でチャレンジできることはいろいろあります。ここでは、実際に活躍している人が多い職業について詳しく見ていきましょう。
1. ホワイトニングサロン
ホワイトニングサロンとは、歯を白くする施術をメインとするサロンです。ホワイトニングには歯科医院で行うものとそれ以外とがあり、以下のような違いがあります。
・歯科医院のホワイトニング
漂白効果がある薬剤を使って歯の内部から白くする。歯科医師または歯科医師の指導を受けた歯科衛生士が行う。
・ホワイトニングサロンのホワイトニング
漂白効果がない薬剤を使い、歯の表面の着色やくすみを落とす。サロンのスタッフから指導を受け、顧客自らが行う。
ホワイトニングサロンで行うのはセルフホワイトニングで、歯科医師の指導は必要ありません。セルフホワイトニングは歯の着色汚れやくすみをきれいにするためのもので、本来の歯の色に戻す効果があります。
セルフホワイトニングは資格がなくても提供できるサービスですが、歯科衛生士がサロンを開業することで、顧客にとって安心感が生まれるという大きなメリットがあります。
また、歯科衛生士は口腔内に触れることが許可されているため、口腔マッサージなどのメニューをセットで提供することも可能です。

ホワイトニングサロンなら独立も現実的ですが、医療行為ではない分、歯科衛生士としての専門性をどう活かすかが差別化のカギになりそうです!
2. デンタルエステ
デンタルエステとは、口の中や口周りの美容・健康を目的とした施術を行うサロンです。歯科医院に併設されたサロンとエステ専門のサロンとがありますが、歯科衛生士が開業すれば、資格を活かして口腔内のケアを提供できます。
具体的なメニューはサロンによって異なります。よくあるのは、口腔内のマッサージ・歯肉のケア・セルフホワイトニング・歯磨き・舌のクリーニングなどです。また、リップケアやフェイススマッサージなど、デンタル以外の施術を行うサロンもあります。
デンタルエステには歯科衛生士を対象とした民間資格もあります。口腔内のマッサージ・フェイシャルエステ・リンパマッサージなどを学べるので、提供できるメニューも増えます。
3. 歯磨きサロン
歯磨きサロンはその名の通り、歯科衛生士が歯磨きを行うサロンです。歯科衛生士が開業する場合は医療器具は使用せず、歯ブラシや歯磨きペーストなどを使って歯をきれいにします。
歯磨きサロンのメニューにも特に決まりはなく、デンタルエステと共通することが多い傾向にあります。口腔内のマッサージ・歯肉ケア・セルフホワイトニングなどのメニューも揃っていれば、顧客の幅広いニーズに応えることが可能になります。
歯磨きサロンは医療機関ではないため、歯石除去などの処置は行えません。しかし、歯医者さんが苦手な人でも通いやすいといったメリットがあり、口腔内トラブルの予防に大きく貢献できます。
4. フリーランス歯科衛生士
フリーランス歯科衛生士とは、特定の歯科医院に属さず、スポット勤務や業務委託などで働く歯科衛生士です。働く場所や時間を自分で決められるというメリットがあり、特技を活かして専門分野の業務だけを担うという働き方も可能です。
スポット勤務の求人は常にあるので、まずは複数の歯科医院を掛け持ちするのもよいでしょう。積極的に売り込みをすれば、業務委託につながるケースもあります。
また、他の仕事と並行できるのも、フリーランスとして働くメリットの一つです。例えば、サロンの経営が軌道に乗るまでの間、フリーランス歯科衛生士としてスポット業務を請け負えば、安定した収入を得ることができます。

フリーランスは自由な働き方が魅力的ですが、収入の不安定さや医院との信頼関係づくりなど、想像以上に営業力や自己管理が求められますね。
5. セミナー講師
特別な技術や知識を持っている人や、人に教えることが好きな人には、セミナー講師という働き方もおすすめです。セミナー講師もフリーランスの一種で、他社から依頼を受ける方法と、自分でセミナーを開催する方法とがあります。
セミナーのテーマは多岐にわたります。一般の人を対象にした予防歯科・小児歯科・訪問歯科などにまつわるテーマ、歯科衛生士を対象とした臨床業務や働き方などに関するテーマ、歯科医師を対象とした経営戦略など、ターゲットとする受講者も様々です。
セミナー講師として独立するには、歯科系セミナーを開催している会社と契約したり、自分でセミナーを開催したりして実績を積んでいきます。昨今はオンラインセミナーも人気なので、配信に関する基本的な知識を身につけておくこともおすすめです。
6. コンサルタント
コンサルタントとは、クライアントに経営戦略や業務改善案などを提案し、業績を上げるお手伝いをする職業です。歯科衛生士のコンサルタントは歯科医院の経営に携わるケースが大半で、新規の患者さんの獲得・自費診療の収益アップ・歯科衛生士の育成など、様々な課題に取り組みます。
コンサルタントになるのに資格は必要ありませんが、経営に関する資格がある方が信頼性が増します。MBA・キャリアコンサルタント・中小企業診断士など、いろいろな資格があるので取得を検討してみましょう。
独立までのプロセスは人によって様々ですが、勤務する歯科医院の経営に携わるところから始める人もいます。顧客を獲得するためのプロモーションも大切なので、自らセミナーを開催するのもおすすめです。
7. Webメディアの制作・運営
歯科関連の情報を扱うメディアでは、歯科衛生士の専門的な知識がいろいろな形で役に立ちます。フリーランスとして活躍できるのは、以下のような仕事です。
- Webライティング
- 記事の監修
- イラスト制作
- 画像・動画編集
これらの仕事は既存のメディアと契約する働き方もありますが、自分でサイトを運営したり、動画チャンネルを開設したりする方法もあります。
ただし、収益化するまでに時間がかかることが多いため、まずは副業として始めてみるといいかもしれません。
8. SNS運用代行
今は歯科医院もSNSを通じて患者の獲得などに励む時代です。しかし、日々の業務に追われて更新が滞ってしまうケースが少なくありません。
そこで需要が高まっているのが、SNS運用代行です。クライアントに代わってSNSを運用する仕事で、経営戦略などのコンサルタント的な役割も担います。
SNS運用代行は求人サイトでも募集されており、誰でも始められるのが魅力です。SNSの運用実績があると強みになりますが、経営関連の資格などがあればなおよいでしょう。

SNS運用は始めやすそうですが、歯科の専門知識を活かしつつマーケティングのスキルも磨く必要があり、意外と奥が深い仕事かもしれません!


歯科衛生士が独立するには?開業までの手順

晴れて個人事業主として開業するまでには、綿密な計画や準備が欠かせません。ここでは、大まかな流れについて解説しましょう。
1. 事業計画書の作成
事業計画書とは、事業内容・経営理念・事業予算などについてまとめたものです。細かい点まで一つ一つ明確にすることで、開業プランが具体化され、現実的な課題も浮き彫りになります。
事業計画書は銀行から融資を受ける際に必要になります。また、クライアントへの説明やスタッフの雇用の際などにも、事業計画書があればビジョンが伝わりやすくなります。

事業計画書と聞くと難しそうですが、自分の想いやビジョンを整理する良い機会にもなります。曖昧だった目標がはっきり見えてくるはずです!
2. 資金の調達
- 金融機関の融資
- 創業助成金
- 小規模事業者持続化補助金
- クラウドファンディング
事業内容や規模にもよりますが、一般的に開業資金に必要なのは500~1,000万円くらいと言われています。自己資金でまかなえない場合、足りない資金を調達するには以下のような方法があります。
いずれもすぐに受け取れるものではないため、資金計画は早めに立てておくことが重要です。
3. 物件探し
サロンやセミナーなどの営業に賃貸物件を利用する場合、立地条件が集客率に大きく影響します。駅近であることはもちろん、ターゲット層が多く利用するエリアか、周辺に競合店はないかなど、物件選びのポイントを細かく決めておくことが大切です。
一方、経費節約を重視するなら、自宅サロンを開くという選択肢もあります。自宅サロンは初期費用が安く抑えられ、家賃もかからないという大きなメリットがあります。ただし、顧客層が限定されるなどのデメリットもあるため、事業計画を綿密に練ることが重要です。
4. 設備・備品等の準備
開業する場所が決まったら、事業に必要な設備や備品などを準備します。例えば、ホワイトニングサロンの場合は、セルフホワイトニングのマシンが必要です。備品も含めて一度に用意したいのであれば、ホワイトニングサロンのフランチャイズ契約を結ぶという方法もあります。
また、居抜き物件を借りることで、設備にかかる費用を抑えることも可能です。居抜き物件とは、内装や設備などが以前使われていたままの状態になっている物件です。サロンとして使用されていた物件なら、個室スペースやインテリアなどをそのまま利用できる可能性があります。

初期費用を抑えたい気持ちは分かりますが、居抜き物件やフランチャイズは後々の制約もあるので、目先のメリットだけで決めない慎重さも大切です。
5. 各種届出の提出
開業の種類には、個人事業主と法人の2種類があります。小規模の事業として始める場合は、個人事業主として開業届を出すのが一般的です。個人事業主が提出する届出には、税務署に提出する「開業届」と、居住する都道府県税事務所に提出する「個人事業税の事業開始等申告書」とがあります。
個人事業主の開業届は、開業後1ヶ月以内に提出する必要があります。また、確定申告は税負担が軽減される青色申告がおすすめですが、青色申告をするには、開業後2ヵ月以内に「青色申告承認申請書」を提出することが必要です。
サロンなどを経営する際はもちろんですが、フリーランスとして活動する場合も、開業届を出して個人事業主になることで、補助金や助成金を申請できたり、子供を保育園に入園させる際の就労証明になったりします。
歯科衛生士が独立開業する時の注意点

- 健康保険や年金を切り替える
- 確定申告に備える
個人事業主として独立すると、加入できる社会保険の種類が変わったり、確定申告が必要になったりします。ギリギリになってあわてないよう、何をするべきか理解しておきましょう。
1. 健康保険や年金を切り替える
個人事業主が加入できるのは、国民健康保険や国民年金です。これらの切り替え手続きは、退職後14日以内に行う決まりになっています。一方、事業を法人化した場合は、一人社長であっても全国健康保険協会の健康保険や厚生年金への加入が必要となります。
2. 確定申告に備える
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。白色申告は比較的簡単に申告できますが、節税効果はありません。一方、青色申告は帳簿の付け方や提出書類の作成に手間がかかりますが、最大で65万円の控除を受けることができます。
確定申告をスムーズに行うには、オンラインの会計ソフトなどを利用するのがおすすめです。また、事業規模が拡大してきた場合は、税理士さんにお願いするのもよいでしょう。
まとめ
歯科衛生士の新しい働き方として注目される「独立開業」というスタイル。自由な働き方を模索したい人や、自分の特技をもっと活かしたい人などには、特に魅力的に感じられるのではないでしょうか。
歯科衛生士にできることは、まだまだたくさんあります。独立開業に興味がある人は、ぜひ具体的なプランを立てることから始めてみてください!


