「歯科衛生士はやめておいた方がいい」「歯科衛生士にならなきゃよかった」といった意見を見かけて、就職や転職を迷ってしまうことはありませんか?
どんな仕事にも大変な面は必ずあるものですが、歯科衛生士も例外ではありません。では、「歯科衛生士はやめとけ」と言われてしまうのはなぜなのか、その理由や現役歯科衛生士の本音などを探っていきましょう!
d latte編集部 ちはる
歯科衛生士歴7年。小児歯科専門医院で子どもたちの口腔健康管理に従事。歯科恐怖症の子どもたちとも信頼関係を築くのが得意で、保護者からの信頼も厚い。子どもの成長に合わせた口腔ケア指導や、家族ぐるみでの予防意識向上に取り組む。明るく親しみやすい人柄で、子育て世代に寄り添う記事を執筆している。
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歯科衛生士を辞めたいと思った人はどれくらい?
Q. 転職を考えたことはある?
- 考えたことがある(歯科衛生士として) 32.1%
- 現在考えている(歯科衛生士としての職を継続) 12.2%
- 考えたことがある(歯科衛生士以外の職) 14.9%
- 現在考えている(歯科衛生士以外の職) 5.5%
参考:日本歯科衛生士会「令和7年歯科衛生士の勤務実態調査報告書」
日本歯科衛生士会の令和7年歯科衛生士の勤務実態調査報告書によると、転職を考えたことがあるかという質問に対して、歯科衛生士以外の職を考えたことがあると答えた人や、現在考えていると答えた人の割合は、合わせて20.4%という結果になりました。
つまり、5人に1人は歯科衛生士を辞めたいと思った、あるいは今まさに思っているということになります。もちろん全員が離職に至ったわけではありませんが、歯科衛生士にならなきゃよかった、歯科衛生士を辞めたいと思うことは、決して珍しいことではないと言えるわけです。

5人に1人が歯科衛生士以外の職を考えているというデータは、決して少なくない数字ですよね。一人で抱え込まず、自分の気持ちと向き合う時間も大切なのではないでしょうか。
歯科衛生士はやめた方がいいと言われる理由とは?
歯科衛生士の転職や退職理由で多いのは、主に上記のようなことです。具体的にどんな点が辛いのか、詳しく見ていきましょう。
1. 給与が安いことがある
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、歯科衛生士の平均月収は約29万円となっています。国家資格である歯科衛生士は、働く女性の中では比較的給料が高く、収入が安定していることが魅力です。
しかし、勤務先によっては給料が平均を大きく下回っていることもあります。また、ボーナスが期待していたほど支給されない、なかなか昇給できないなど、給与や待遇に対する不満で離職を考える人は少なくないのです。
ちなみに、求人票に記載されている給与額は見込み額であり、実際の給料と異なる場合でも、原則として違法にはなりません。実際の給与額は、内定時に書面で明示される労働条件に記載されています。そのため、承諾前に必ず確認することが重要です。
2. 休みを取りづらい
小規模の歯科医院は歯科衛生士の数も少なく、休みを取りづらいことが多いのが悩みの種です。また、有給休暇の制度があっても、実際には人手不足でなかなか取得できなかったり、有給を取ると周りに嫌な顔をされたりするケースもあります。
さらに、歯科医院は土曜日も診療していることが多く、中には日曜や祝日も診療している場合があります。そのため、家族や友人と休みが合わないという理由から、「土日に休める仕事に就きたい」と思う人もいます。
3. 仕事量が多い
歯科衛生士の主な業務は、歯のクリーニングやスケーリングなどの予防歯科や、歯科医師の診療補助などです。しかし、これ以外にもカルテの入力や受付業務、院内清掃など、様々な仕事を担うケースが少なくありません。
また、キャリアが上がるにつれ、新人歯科衛生士の指導役や、患者さんからのクレーム対応などを任されることもあります。
歯科衛生士がどのような業務を担当するのかは、勤務先によって異なります。具体的な仕事量は働き始めてみないと分からないことも多いため、「思っていた働き方と違う!」と感じて落胆してしまうことがあるのです。

予防処置や診療補助以外にも、カルテ入力や清掃、指導役まで。想定外の業務の多さに戸惑う気持ち、よく分かります。働き始めて初めて見える現実とのギャップは大きいものです。
4. 人間関係が面倒
歯科衛生士の多くは歯科医院に勤務しており、毎日同じメンバーで仕事をする人が大半です。そのため、院長と気が合わなかったり、歯科衛生士同士の関係がうまくいっていなかったりすると、大きなストレスになってしまいます。
また、患者さんとの関係に悩む人もいます。「担当した患者さんからクレームを受けた」、「人見知りでうまく接することができない」など、患者さんと良好な関係を築けずに悩む歯科衛生士は意外と多いのです。
人間関係を面倒に感じるのは、どの職業にもよくあることです。しかし、歯科医院ならではの職場環境が原因になっていることも多いため、「仕事を辞めたい!」と思ってしまう人がいるわけです。

5. 勉強が大変
歯科衛生士の資格を取得するには、専門学校・短大・大学などに通って学び、国家試験に合格しなければなりません。そのため、費用も時間も有するのが大きな課題です。
そして、晴れて歯科衛生士として働き始めてからも、様々な学びが必要になります。基本的なスキルを磨くことはもちろん、技術の進歩に伴ったアップデートも大切だからです。
また、歯科衛生士には仕事に役立つ資格がいろいろありますが、歯科衛生士でダブルライセンスを目指すには、仕事をしながら勉強に励む意志の強さが不可欠です。
歯科衛生士にならなきゃよかった!リアルな本音を調査
「歯科衛生士を辞めようかな…」と思うきっかけは人それぞれ。では、現役の歯科衛生士さんたちはどんなことで悩んでいるのでしょうか?その本音を探っていきましょう。
1. 先生のダメ出しが厳しい
子育てで8年ブランクがあり、半年前に復職しました。今の職場はドクターが2人いるのですが、1人の先生のダメ出しがすごく厳しいです…。患者さんの前でも平気でダメ出しするので、最近はその先生のそばにいるだけで緊張してしまいます。転職も考えますが、次の職場でもっと嫌な思いをするかも…と思うと怖くて、歯科衛生士を辞めようかなと悩んでいます。
国家資格である歯科衛生士は、子育てなどでブランクがあっても復職しやすいのがメリットです。しかし、仕事に慣れるまでに時間がかかることは決して珍しくありません。
復職後に思うように働けないと、どうしても自信をなくしてしまうものです。先生から厳しく注意されれば、なおさら委縮してしまうのは当然だと言えるでしょう。
院長との人間関係に悩む歯科衛生士は非常に多く、転職の理由としても上位に入ります。転職で失敗しないためには、事前に院内見学をして、職場の雰囲気をしっかり確認することが大切です。
2. 仕事量が多い・土日に休めない
歯科衛生士3年目で、現在の職場になってから2ヶ月です。仕事量が多くて給料に見合わず、土日も出勤。院長のご機嫌をうかがうのも疲れます。担当した患者さんに喜んでもらえるとやりがいを感じますが、家族と休みが合わないので、土日が休みの仕事に変えたいなぁと思っています。
土日の診療は患者さんにとってはありがたいことですが、働く人たちには不満になりがちです。さらに、仕事量が給料に見合わない、院長と接するのがストレスとなれば、他の職業の方が良さそうに思えるのも無理はありません。
しかし、仕事そのものにやりがいを感じているのであれば、歯科衛生士を辞めるのはもったいないことです。歯科医院の中には、土日・祝日を休診としているところもあります。また、給与や仕事内容なども職場によって違うので、まずは転職を考えてみるのがベストだと言えるでしょう。

人見知りや口下手で悩んでいる歯科衛生士は、実は少なくないんですよね。患者様やスタッフとのコミュニケーションに苦手意識を持ちながらも、日々頑張っている方は多いはずです。
3. 仕事ができない
10年目の歯科衛生士です。今の職場で働き始めて2ヶ月経ちますが、前の職場でやったことがない仕事がたくさんあり、全然できません。患者さんからも「痛い」「雑だ」と何件かクレームを受けています。10年目なのに本当にできなくて、自分でも向いていないと思うようになりました。他の仕事をしようか考え中です。
職場が変わって不慣れな業務を担当するようになると、誰でも最初は思うようにいかないものです。歯科衛生士としてのキャリアが長ければ、よけいに自信をなくしてしまうこともあるでしょう。
しかし、スキル不足の大半は、地道な練習の積み重ねで解決できます。研修などに参加して腕を磨けば、いつの間にか辞めたい気持ちがなくなるかもしれません。
4. 人と話すのが苦手
新卒で働き始めてもうすぐ2年目です。元々人見知りなのですが、患者さんと話すのがとてもしんどいです。職場の先輩も苦手な人が多く、自分から話しかけることができません。仕事もできなさすぎて、先輩に嫌味を言われて泣きそうになりました。辞めたいと思っていますが、なかなかはっきり伝えることができません。
歯科衛生士は「人と接するのが好きな人」と思われがちですが、実は人見知りや口下手で悩んでいる人は意外と多くいます。患者さんも一緒に働く人たちも性格は千差万別なので、マニュアルで対処できないのが難しいところです。
ただ、仕事における対人関係の悩みは、接遇マナーや話し方などの研修を受けると、ある程度改善できる可能性があります。コミュニケーションスキルはどの職業でも役に立つので、勇気を出してチャレンジしてみるのもおすすめです。


歯科衛生士を辞めた後も、医療・美容・事務など活躍の場は様々。これまでの経験や資格を活かせる選択肢は意外と広がっているものです。新しい一歩を踏み出す勇気につながりますね。

歯科衛生士を辞めた後はどうしてる?
歯科衛生士を辞めたいと思っても、他に何の仕事ができるのか考えると、不安になってしまいますよね。結論から言うと、元歯科衛生士の人たちはいろいろな業界で活躍しています。その主な職業例をご紹介しましょう。
1. 医療・福祉系
歯科衛生士にとってなじみがあるのは、やはり医療・福祉業界です。歯科衛生士を辞めた人の中には、専門学校に入学して看護師・介護士・歯科技工士などを目指す人もいます。再び歯科衛生士として働きたいと思った時にも、医療・福祉系の資格は大いに役立ちます。
また、医療事務も人気の職業です。医療事務は特別な資格がなくてもできますが、通信講座などで基本を学んでおくと即戦力として働けます。
2. 美容関連
ネイリスト・エステティシャン・美容部員(ビューティーアドバイザー)などは、手先を使うことや人と接することなどが歯科衛生士と共通しています。また、特別な資格がなくてもできるため、転職先の候補として挙がることが多い職業です。
とはいえ、未経験で転職するなら、何らかの資格がある方が安心です。美容関連の資格にはいろいろな種類があり、通信講座で取得できるものもあります。
3. 一般事務
歯科医院で事務作業をこなすうちに、「事務職の方が向いているかも」と感じて転職する歯科衛生士もいます。一般企業の事務職は求人数が多く、土日に休める会社が多いところが魅力です。
事務職の求人は「未経験可」としているものも多いですが、パソコンスキルは必須と考えた方がよいでしょう。タイピングやショートカットキー、Officeソフト(Word・Excel・PowerPoint)の使い方などを学んでおくことがおすすめです。

4. 歯科関連企業
歯科関連企業とは、オーラルケア製品・歯科医療器具・歯科医療機器・歯科材料など、歯科に関する様々な製品を手がける企業です。歯科衛生士の資格があれば、そのスキルやキャリアを歯科関連企業で活かすことが可能です。
人と話すことが好きな人は、営業職で活躍するという選択肢もあります。特に歯科医院を対象とする営業の場合は、臨床業務の経験があることが説得力を生みます。
5. 自営業・フリーランス
元歯科衛生士の人の中には、これまでのスキルを活かして独立・起業する人もいます。一例として挙げられるのは、歯科医院向けのコンサルタント・歯科関連のセミナー講師やWEBライター・ホワイトニングサロンの経営などです。
自営業は自分の望むように仕事ができる一方、収入が不安定になるという大きなデメリットがあります。しかし、歯科衛生士の場合はフリーランスとしてスポット業務を請け負うなど、安定した収入を得ながらやりたいことを目指すことも可能です。


歯科衛生士を辞めた後も、医療・美容・事務など活躍の場は様々。これまでの経験や資格を活かせる選択肢は意外と広がっているものです。新しい一歩を踏み出す勇気につながりますね。
まとめ
「歯科衛生士はやめておいた方がいい」という意見があるのは、人間関係や給与、仕事内容などで不満やストレスを感じる人が多いからだと言えます。
しかし、他の歯科医院に転職したり、スキルを磨くことで自信を取り戻す人もいます。「歯科衛生士を辞めたい」と思った時は、その原因をどうすれば解決できるか、まずはじっくり考えてみてくださいね。





