今の職場を辞めたいけれど転職回数が多くなることは今後不利になるのでは？と心配される歯科衛生士さんも多いのではないでしょうか？
結論を言えば、必ずしも不利になるわけではありません。
この記事では転職回数をポジティブに変えるための考え方や面接でのテクニックからキャリア形成についてまとめました。
たくさんの歯科衛生士さんの面接を行ってきた採用面接官の視点からあなたの参考になれば幸いです！
この記事を書いた人
d latte編集部 みさき
歯科衛生士歴12年。総合病院の歯科口腔外科で経験を積んだ後、現在は一般歯科クリニックで予防歯科を中心に従事。患者さんとのコミュニケーションを大切にし、分かりやすい口腔ケア指導に定評がある。2児の母として育児と仕事の両立に奮闘中。同じ境遇の歯科衛生士さんに寄り添う記事執筆を心がけている。
歯科衛生士の転職率と転職回数の実態は？
歯科衛生士の平均転職回数とその傾向
歯科衛生士の転職率は他の医療職と比較しても高く、キャリアの中で2〜3回の転職を経験する方が多いのが現状です。特に経験を積み始める20代から30代前半にかけての転職率が高い傾向にあります。
厚生労働省の調査によると、歯科衛生士の約70%が転職経験を持ち、平均転職回数は2.5回とされています。この数字から見ても、転職を経験することは珍しいことではなく、むしろキャリア形成の一環として捉えられています。
転職を考えることは自然なことですね。多くの先輩方も同じように悩みながらキャリアを築いてこられました。それぞれの歩みが大切な成長の過程だと思います。
年代別にみる歯科衛生士の転職回数の違い！
20代の歯科衛生士は技術向上やキャリアアップを目的とした転職が多く、平均1〜2回程度の転職を経験する傾向があります。
30代になると、ワークライフバランスや給与・待遇面を重視した転職が増え、この年代での平均転職回数は2〜3回程度です。
40代以降は家庭との両立や職場環境を重視した転職が中心となり、転職回数は減少する傾向にあります。このように年代によって転職の目的や頻度が異なることを理解しておくことが大切です。
このようなことを知っておくことで、自分の転職歴が特別多いわけではないという安心感を持つことができます。
他の医療職と比較した歯科衛生士の転職状況！
看護師や薬剤師などの他の医療職と比較すると、歯科衛生士は小規模な診療所で働くケースが多いため、人間関係や職場環境による影響を受けやすい特徴があります。
また、診療所によって業務内容や裁量が大きく異なるため、自分に合った職場を探す過程で転職を重ねるケースも少なくありません。一方で、歯科業界では転職経験そのものがマイナスに捉えられることは少なく、むしろ多様な経験を積んだ人材として評価されることもあります。
小さな職場だからこそ感じる人間関係の重さや、自分らしく働ける場所を求める気持ちは、多くの方が抱える共通の想いです。転職を通じて積み重ねた経験は、きっと大きな財産になっているはずです。
どう見られる？転職回数が多い歯科衛生士が直面する4つのデメリット
1. 忍耐力や定着性に疑問を持たれる
転職回数が多い場合、特に短期間で繰り返し転職していると、忍耐力がない、あるいは職場に定着できない人材だと誤解されるリスクがあります。採用側からすれば、教育や研修に時間とコストをかけても、すぐに退職してしまうのではないかという懸念を抱きやすくなります。
特に1年未満の在籍期間が複数回あると、このような印象を与えやすくなるため注意が必要です。面接では、転職の理由を前向きに説明し、今後は長く働きたい意向を伝えることが大切です。
短期間での転職が続くと感じる不安な気持ち、よく分かります。でも、その経験があるからこそ見えてきた理想の働き方もあるのではないでしょうか。次こそは長く働ける場所を見つけたいという想いを、きちんと伝えていけば大丈夫です。
2. 一貫性のないキャリア形成とみなされる
様々な分野や環境で経験を積むことは学びの機会となりますが、あまりにも異なる分野への転職を繰り返すと、専門性の深まりに欠けると判断されることもあります。
例えば、一般歯科から小児歯科、矯正歯科、インプラント専門クリニックと短期間で移り変わると、それぞれの分野での専門性が十分に身についていないと見られる可能性があります。キャリアの一貫性を示すためには、転職の過程で自分が何を学び、どのようにスキルを積み重ねてきたかを明確に説明できることが重要です。
3. 面接時に退職理由を聞かれる
転職面接では必ず前職の退職理由を聞かれます。転職回数が多いと、それぞれの職場を去った理由について詳しく説明する必要があり、その対応が難しくなることがあります。
特に人間関係や院長との折り合いが合わなかったなどのネガティブな理由を正直に話してしまうと、採用側に「問題のある人材」という印象を与えかねません。
退職理由は事実を曲げずに、できるだけポジティブな表現で伝える工夫が必要です。自己成長やキャリアアップなど前向きな視点で説明することを心がけましょう。
面接で退職理由を聞かれる度に感じる緊張感、多くの方が経験されています。正直に話したい気持ちと印象を気にする複雑さもありますが、成長への想いを大切に、自分らしい表現で伝えていけばきっと伝わります。
4. 職場に慣れるまでの負担が繰り返される
新しい職場では、診療システムや使用する機器、カルテの書き方、患者さんとの関わり方など、多くのことを学び直す必要があります。
転職を繰り返すほど、この「慣れる期間」が頻繁に訪れることになり、精神的・肉体的な負担が大きくなります。また、新しい人間関係を築くストレスも無視できません。
こうした負担が積み重なると、自信を失ったり疲れを感じたりすることもあるでしょう。転職を検討する際は、新しい環境への適応にかかる時間とエネルギーも考慮に入れることが大切です。
転職回数の多さをポジティブに考える方法！
1. 多様な診療環境や治療技術のノウハウの蓄積
複数の歯科医院で勤務経験があるということは、様々な診療スタイルや治療技術に触れている証でもあります。異なる医院での経験は、多様な症例への対応力や柔軟な技術応用力につながります。
例えば、一般歯科と矯正歯科での経験があれば、両分野の知識を活かした総合的なアプローチが可能になります。
面接では「〇〇歯科では△△の技術を学び、□□クリニックでは◇◇のシステムを経験しました」と具体的に伝えることで、幅広い経験を持つ即戦力としてアピールできます。
様々な医院での経験は、時には迷いも生むけれど、それぞれの場所で培った技術や知識は確実に自分の財産になっています。多様な現場を知っているからこそ見える視点や対応力は、きっと新しい職場でも大きな強みになるはずです。
2. 様々な歯科医院のシステムへの適応力
複数の職場を経験することで、異なる診療システムや院内ルール、カルテ管理方法などへの適応力が養われています。新しい環境にすぐに馴染める柔軟性は、採用側にとって大きなメリットです。
「過去の職場では様々なシステムを経験しているので、新しい環境にも迅速に適応できます」と伝えれば、即戦力としての評価につながります。
また、異なる医院での経験を通じて、業務効率化やシステム改善のアイデアを持っていることも、前職での経験を活かせるポイントとしてアピールできます。
3. 人間関係を構築するスキルの向上
複数の職場で働いた経験は、様々なタイプの歯科医師や同僚との関わり方を学ぶ機会でもあります。
コミュニケーション能力や協調性、状況に応じた立ち回りなど、対人関係スキルの向上につながっています
「様々な環境で働いた経験から、チーム内での円滑なコミュニケーションの重要性を学びました」と伝えることで、人間関係構築に長けた人材であることをアピールできます。
特に小規模な歯科医院では、スタッフ間の関係性が業務効率に直結するため、このようなスキルは高く評価される可能性があります。
4. 将来のキャリアビジョンの明確化
様々な歯科医院での経験を通じて、自分が歯科衛生士としてどのようなキャリアを歩みたいのかが明確になってくることがあります。
例えば、予防歯科に力を入れたい、小児歯科に特化したい、あるいは訪問歯科に興味があるなど、将来の方向性が見えてくると、それに沿った職場選びができるようになります。
面接では「これまでの経験を通じて、□□の分野に特に興味を持ち、貴院でさらにスキルアップしたいと考えています」と前向きな姿勢をアピールすることができます。
いろいろな現場を経験するうちに、自分が本当にやりたいことが見えてくる瞬間があります。迷いながらも歩んできた道のりが、実は理想のキャリアへの大切なステップだったと気づく時、これまでの経験がすべて意味を持ってくるものです。
5. 自分に最適な職場を見極める力が付く
複数の職場を経験したことで、自分がどのような環境で最も力を発揮できるかを見極める力が養われています。たとえば、チーム医療を重視する環境が合うのか、ある程度の裁量を持って働ける環境が適しているのかなど、自分の適性を客観的に把握できるようになります。
これは転職活動においても大きな強みとなり、応募先を選ぶ際の判断材料になります。自分の強みを活かせる職場を的確に選べれば、長く働き続けられる可能性も高まります。
転職経験の多さを前向きに伝える面接のテクニック！
過去の経験と学びを医院の貢献に結びつける自己PR！
面接での自己アピールは、転職回数の多さをカバーする重要な要素です。
効果的なアピールには「経験→学び→今後の貢献」という3ステップが有効です。
具体的には「〇〇医院では△△の症例を多く担当し、□□というスキルを習得しました。この経験は貴院の◇◇診療に直接活かせると考えています」というように、過去の経験と学びを未来の貢献に結びつける表現を心がけましょう。
また、数字を用いて「月間〇〇件の予防処置を担当」など具体的に実績を示すことで説得力が増します。転職回数が多い場合こそ、各職場での明確な学びと成長を伝えることが重要です。
転職を重ねた経験を語る緊張感、よくわかります。積み重ねた学びを具体的に伝えることで、きっと自分の価値を理解してもらえるはずです。
面接での転職理由の伝え方のポイント
転職理由を伝える際は、事実に基づきながらもポジティブな側面に焦点を当てることが重要です。例えば「人間関係が合わなかった」ではなく「より自分のスキルを活かせる環境を求めていました」というように、前向きな表現に置き換えましょう。
また、前職の批判や不満を口にするのではなく、新しい職場に期待することや自己成長の意欲を伝えることで、採用担当者に好印象を与えることができます。誠実さを保ちながらも、自分の強みとやる気をアピールする姿勢が大切です。
前職の本当の理由を言いづらい気持ち、よく分かります。でも成長への想いや期待を素直に伝えることで、きっと誠実な人柄が伝わるはずです。
ネガティブな理由をポジティブに言い換える具体例
| ネガティブ表現 | ポジティブ表現 |
| 「給料が安かった」 | 「キャリアアップに伴い、より待遇面で評価される環境を探していました」 |
| 「院長との関係が難しかった」 | 「自分の専門性をさらに高められる指導環境を求めていました」 |
| 「残業が多かった」 | 「ワークライフバランスを大切にしながら、長く働き続けられる環境を探していました」 |
| 「業務内容に不満があった」 | 「予防処置やブラッシング指導など、歯科衛生士としての専門性をより発揮できる職場を希望していました」 |
このように、不満や批判ではなく、自分の希望や成長意欲を前面に出した表現に言い換えることで印象が大きく変わります。
今までの経験を活かしてどう貢献できるのか等の意欲を伝える
面接では、これまでの転職経験を通じて得たスキルや知識をどのように新しい職場で活かせるかを具体的に伝えることが重要です。
「前職では小児歯科での対応を学び、患者さんとの信頼関係構築に力を入れてきました。その経験を貴院でも活かし、患者さんの不安を取り除けるよう努めたいと思います」など、具体的なエピソードを交えながら説明すると説得力が増します。また、新しい職場の特色や強みを理解した上で、自分がどのように貢献できるかを伝えることも効果的です。
【タイプ別】採用担当者を納得させる志望動機の事例
複数回の転職経験を持つ場合の効果的なアプローチ
「様々な医院での経験を通じて、歯科衛生士として自分が最も力を発揮できる環境と条件が明確になりました。特に患者さんとじっくり向き合える時間を確保し、予防処置や口腔ケア指導に力を入れている貴院の診療方針に強く共感しています。
これまでの転職で培った異なる診療スタイルへの適応力と、多様な患者対応の経験を貴院で活かしたいと考えています。転職を重ねる中で、自分にとって最も大切なのは『患者さんの健康に直接貢献できる実感』だと気づきました。貴院の理念とスタッフの皆様の姿勢に触れ、ここで長期的に貢献していきたいという強い思いを抱いています。」
転職を重ねた経験が、実は自分らしい働き方を見つける大切な道のりだったと気づく瞬間。その想いを素直に伝えることで、きっと共感してもらえるはずです。
専門分野へのキャリアチェンジを希望する場合
「一般歯科での経験を通じて歯科医療の基礎を固めながら、特に矯正治療に関わる患者さんのサポートに強い関心と適性を感じるようになりました。一般的な予防処置や治療補助の経験は、矯正治療中の患者さんの口腔内変化を総合的に評価し、適切なケアプランを立案する上での重要な基盤になると考えています。
貴院は最新の矯正システムを導入しつつ、患者さん一人ひとりの生活背景に配慮した治療計画を立てる姿勢に感銘を受けました。矯正装置装着患者特有の口腔ケアの難しさをサポートし、治療脱落を防ぐための具体的な指導法を習得したいと考えています。長期にわたる矯正治療を最後まで支える歯科衛生士として、患者さんの笑顔に貢献したいという思いがあります。」
新しい分野への挑戦を志望動機で伝える時の迷いや不安、とてもよく分かります。これまでの経験がどう活かせるかを具体的に示しながら、純粋な学びたい気持ちを表現することが大切ですね。
異なる医療環境への挑戦を目指す場合
「個人クリニックでの経験で患者さんとの濃密な関係構築の大切さを学ぶとともに、より幅広い症例や多職種連携の医療に携わりたいという思いが強くなりました。
大学病院という環境では、様々な基礎疾患を持つ患者さんの口腔ケアや、手術前後の専門的な口腔管理など、クリニックでは経験できない高度な歯科衛生業務に挑戦できると考えています。
私はクリニックで培った一人ひとりに寄り添う姿勢を大切にしながら、より専門的で包括的な口腔ケアの知識と技術を習得したいと考えています。
チーム医療の一員として、他職種との連携を学びながら、歯科衛生士の専門性を最大限に発揮し、患者さんのQOL向上に貢献していきたいです。特に周術期の口腔機能管理に興味があり、この分野での専門性を高めていきたいと考えています。」
クリニックから大学病院への環境の変化に対する期待と不安が混じった気持ち、心に響きます。これまでの経験を大切にしながら新しい挑戦への想いを表現する姿勢を示すこおが大切ですね。
働き方の見直しを主な目的とする場合
「専門職として質の高いケアを提供し続けるためには、自己研鑽の時間と心身の健康維持が不可欠だと実感しています。貴院のワークライフバランスを重視する方針と、計画的な有給休暇取得の実現に共感し、長期的なキャリア形成の場として志望しました。前職では一日に15名以上の患者さんを担当する中で効率的な業務遂行力を身につけました。
この経験を活かし、限られた時間の中で最大限の成果を出す工夫を実践していきたいと考えています。また、貴院の定期的な院内研修システムは、働きながら学び続けるという私の希望に合致しています。ワークライフバランスを保ちながらプロフェッショナルとして成長し、長期的に患者さんの口腔健康維持に貢献していきたいという強い思いがあります。」
ただ単に「休みが欲しい」「残業はなるべくしたくない」という書き方ではなく、ワークライフバランスを整えることでどのような貢献ができるのか具体的に記載すると前向きな印象になりますね。
職務経歴書で転職歴をポジティブに見せるコツ
職務経歴書は単なる職歴の羅列ではなく、キャリアストーリーを伝える重要なツールです。転職回数が多い場合は、各職場での「成長と学び」に焦点を当てた構成にすることがポイントです。
具体的には、各職場での主な業務内容に加え、「担当した特徴的な症例数」「習得した専門技術」「参加した研修や取得した資格」など、具体的な実績と成長を示す情報を盛り込みましょう。
また、短期間の勤務についても「〇〇の専門知識習得のための研修期間として従事」など、目的を持った期間だったことを示す表現が効果的です。さらに、一貫したキャリアの方向性を示すため、「予防歯科への専門性を高める」「小児歯科スキルの向上」など、一連の転職に共通するテーマがあれば強調するとよいでしょう。
転職回数を気にしすぎないための考え方と姿勢！
歯科医療人としてキャリア・スキルを積むための転職！
歯科業界では転職自体が珍しいことではなく、むしろキャリア形成の一環として捉えられることが多くなっています。特に若い世代では複数の職場で経験を積み、自分に合った環境や専門分野を見つけていくプロセスは一般的です。
採用側も、多様な経験を持つ人材の価値を理解している場合が多く、転職回数だけで判断されることは少なくなっています。重要なのは転職の質であり、どのような目的を持って転職し、何を学んできたかを明確に説明できることです。
転職回数や頻度よりも成長のための一貫性を示すことが大事！
転職の多さを評価する際に重要なのは、単純な回数よりも「頻度」です。
例えば10年間で3回の転職経験があるのと、2年間で3回の転職では印象が大きく異なります。
各職場での在籍期間が1年以上あれば、基本的なスキルや経験を積むのに十分な時間だと考えられています。重要なのは「なぜその期間で転職したのか」という理由と、「その期間で何を学んだのか」を説明できることです。
転職回数そのものよりも、キャリアの一貫性や成長の軌跡を示せることが大切です。
長期的なキャリアプランを描くことの重要性
転職回数を気にするよりも、自分が歯科衛生士としてどのようなキャリアを築きたいのかという長期的な視点を持つことが大切です。
今後5年、10年先にどのような歯科衛生士になりたいのか、どのような環境で働きたいのかを明確にすることで、転職の必要性や目的も明確になります。キャリアプランを持つことで、「場当たり的な転職」ではなく「目標に向けた戦略的な転職」として捉えることができます。
面接でも、長期的なビジョンを持っていることをアピールすれば、転職回数の多さよりも前向きな姿勢が評価されるでしょう。
まとめ：転職回数の多さをプラスに変えて理想の職場で働こう
歯科衛生士の転職はキャリア形成の一環として珍しくありません。複数回の転職経験は、様々な環境での学びを活かせる強みになります。
大切なのは転職の質と目的を明確にし、自分のビジョンに合った選択をすること。面接では過去の経験をポジティブに伝え、職場選びでは単なる条件だけでなく価値観の一致を重視しましょう。転職回数の多さを気にするよりも、その経験から得た「自分に合う環境」への理解こそが、長く活躍できる場所を見つける鍵となります。
